今までも、お墓にまつわる心配ごとや悩みが解消できるようにいくつかケースを想定しながら書いてきました。
ここで、もう一度、お墓に関して心配な点と思われることをピックアップして解決の糸口になれるように参考用にしました。
永代供養を生前に契約しても納骨するのは誰か
離婚して子どももいないとか、生涯ずっとおひとりさまなので、お墓をついでくれる子どもがいないという人は以前より増えているように感じます。
そのような人が選ぶことが多いのが、永代供養墓です。
永代供養墓の契約自体は、生前でもできるので自分が契約することは可能です。
しかし、自分が死んだ後はどうなるのか。親戚や信頼できる縁者に頼めるのならいいのですが、もし、そのような人がいないという場合は、「死後事務委任契約」を結びことの一つの方法です。
死後事務委任契約は、自分が決めた人でもいいですし、弁護士や行政書士など専門職に依頼することもできます。
死後事務委任契約は、公正証書にして、「死後事務委任契約公正証書」に基づいて様々な手続きを行います。
(専門職に限らす、公正証書にしておくことをおすすめします)
もちろん死後事務委任契約は、事務委任契約なので、お墓のことだけに限りません。遺言書の執行、医療費の支払い、届け出手続き、ペットをどうするか、葬儀に関すること、遺品の整理、さらにはパソコンのデータ抹消、SNSなどへの退会処理など多様です。
頼んでおくことが誰もいない場合は、契約内容をできる限り広範囲にしておくといいでしょう。
NPO法人の中には、生前契約で取り決めをするとともに、合葬墓や共同墓を運営して会員制にしているところもあります。
ただし、NPO法人によっては管理がずさんだったりするので、前もって確認が必要です。
最近は、葬儀社と行政書士事務所が連携したサービスを開始したとの記事も見ました。
2019年8月22日、日本経済新聞オンライン記事より
社会課題解決へ。葬儀の枠を超えた新サービスを提供開始!「おひとりさまの生前契約」3プランを8月15日より提供開始。
これからは、「おひとりさま」のためのサービスも増えてくるものと思われます。
永代供養墓の永代について
ここでもう一度、お墓に関する費用についてです。今までも書きましたが、お墓に関する費用としては、建墓費用と管理費があります。
「お墓を買う」と一口にいいますが、お墓を買うのは、不動産と違って、土地を買うわけではなく、使用権を買うのです。
お墓を建てる費用、建墓費は、墓石費にしろ工事費にしろその時に支払うものですが、管理費については様々です。
現在の管理料金の内容としては、大きく分けて2つあります。
1、使用料・管理料制としている場合
契約時に支払う墓地使用料と年ごとに支払う年間管理料組み合わせるもの。
・墓地使用料
墓地の使用権を得るための料金で、「永代使用料」という名称が多いものです。
・年間管理料
墓地の共用部分についての支出を補填するための費用で、年ごとに支払う場合が多いです。
2,永代供養料制としている場合
これからの将来に向かって墓の管理や供養をおまかせする永代供養墓の場合、「永代供養料」という費用を払います。
供養や管理のための料金を一括して前払いし、墓地使用料しての性格の代金とあわせてまとめて払うという形式です。
契約する際に料金の使いみちなどもしっかりチェックしておきたいものです。ある程度の期間が過ぎたら合葬になるのかどうかも確認が必要です。
墓地使用料(永代使用料)については、使用期限が問題になります。
菩提寺での一般のお墓にしろ、永代供養墓にしろ使用期限については、
- 使用期限の定めがない「無期限制」
- 使用期限の定めはないものの、管理料が支払われるかぎりは、使用権があり、支払われなくなって3年などの期限が経過したら、使用権が亡くなって、合葬墓に改葬されるという「管理料継続制」
- 33年、50年など長期の使用期限が決まっていて、その後は合葬墓に改葬されるという「有期限制」
- 「有期限制」にプラスして使用期限が過ぎたら、お墓の使用者がわかって連絡が取れ、管理料が支払われている場合には、更新を行うという「有期限更新制」
があります。
今までの寺院墓地は、菩提寺と檀家というつながりがあったので、無期限制、もしくは無期限制すら決めていないという例が多かったでしょう。無縁墓となった場合の契約があいまいなっていました。
永代使用は、お墓の使用権が永代に渡って使用できること、それには、永遠という意味だけではないこと
永代供養というのは、寺院や霊園が永代に渡って遺骨を管理して供養すること、こちらも永遠という意味だけではなく将来的には合葬墓に移されて管理されることもあること。
世の中の「永代供養墓」の場合、契約時には、自分はどのような契約なのか、永代使用とか永代供養とかの「永代」の文字に惑わされずに確認が必要です。
納骨室がいっぱいで入れないときはどうするのか
先祖代々の墓は、故郷にあるけれど、先祖代々のために納骨室が満杯になってしまっている。
そのような悩みもあります。もう骨壷が入らない、という状況です。
自分が死んだ後に入るスペースはあるのだろうか。それとも新しくお墓を建てたほうがいいのだろうかという悩みです。
納骨室にいっぱいになってしまったら、古い遺骨を一つの骨壷にまとめたり、遺骨を納骨袋に移動したりするなどいくつか方法があります。ただし、まとめてしまった遺骨は元に戻すことができないので勝手に行わず親族の了承を得てから行いましょう。
古い遺骨から順に一つの骨壷にまとめてスペースをつくる、骨壷から納骨袋に移す、さらには遺骨を散骨のようなパウダー状にして小さな骨壷に移すなどの方法があります。パウダー状にするのは、石材店でも行っているところがあります。
以前、お墓の改葬のところで書いたように納骨室の底が土の場合、素焼きの壺にいれて、壺ごと土に埋める、古い骨から順番に骨壷から取り出して納骨室の土に撒く(散骨)という方法もあるでしょう。こうすれば土と一体化していきます。
まずは、寺院墓地ならお寺に、霊園なら今まで付き合いのある石材店や依頼した石材店に相談しましょう。
ペットとともに墓に入りたいが可能なのか?
最近は、ペットブームなので、ペットと一緒のお墓に入りたいという人は多いです。
それを反映して業者の中には、ペットと一緒にお墓に入れるとキャッチフレーズにしている霊園もあります。
ただ、先祖代々の墓に家族の一員だからとして、ペットを入れることができるかというとそうとも行かない場合が多いようです。
墓埋法は、「国民の宗教感情に適合し、支障なく行われること」を目的としているため、動物と一緒にお墓に入ることに抵抗感がある人いるのので、そのような人に配慮する必要があります。
そのため、特に寺院墓地などではペットはお墓に入れない、人間以外は不可としている規則を設けているのがほとんどです。
そのためペットと一緒にお墓に入れるとしている霊園でも、ペットと一緒のお墓は、別に区分され専用エリアになっていることが多いのです。
せいぜい、人間のお墓の隣に別途、ペット用として埋葬できるようになっているなどで区分けはされるようです。
なお、ペットの埋葬としては、家の庭に埋める、地方自治体によっては、ペット専用の火葬を経てペット専用合葬墓、業者に依頼して(ペット用火葬施設、移動火葬車)、ペットを火葬してからペット専用墓へ、自宅で手元供養できるようにするなど方法が多様になっています。
檀家として行うことの基本的なことは何か
お寺の檀家になるといことは、寺の構成員になることです。信仰を同じくして行事に参加することが求められます。お寺は檀家が納める護寺会費、寄付、墓地使用料などで運営されています。
檀家になると、葬儀や法要などで、そのお寺で行うことができるだけでなく、丁寧な供養が受けられる面もあります。
檀家でしたら、たとえ単身であっても弔いをしてもらう権利があります。
また、そのお寺の住職などに日々の様々なことを相談できるでしょう。お年寄りが住職を頼りにしている例はよくみます。
悩みに寄り添う僧侶も増えているのです。
最近は、檀家になる場合だけでなく、災害があったときの拠り所としてお寺を利用する、地域コミュニティの場として居場所づくりに寺を利用しようという動きもあります。困ったことがあった時や、災害時の「駆け込み寺」的存在になる場合もあるのです。社会的孤立を防ぐための活動をしているお寺もあります。
このように考えると、檀家になる必要がある寺院墓地で新たにお墓を購入する予定の場合、住職に直接会って、話を聞き、相談にのってもらえるのか、人柄が信頼できるかなど、僧侶の性格や相性を確認してから檀家になることをおすすめします。
檀家になりますと、お墓の管理料を納めるだけでなく、お寺の改築、本堂の再建などで寄付を求められたり、様々な備品等の寄進を求められたりします。
金額は、それぞれのお寺の規模や都心にあるか、地方にあるかによっても違いがあります。
目安としては、年会費が1,000円から3,000円、春秋のお彼岸、お盆でのお布施がその時に3,000円から5,000円で、年で考えると、9,000円から15,000円程度になります。
家族の月の命日に僧侶が自宅に行って読経する「月参り」の習慣がある場所では、その都度、2,000円から3,000円を納めるようです。
家族が死亡した際には、葬儀のお布施が20万から30万円、法事では3万から5万円が目安です。
改修工事、新築工事となりますと、檀家の数で割り算となりますが、10万円くらいになる場合もあるでしょう。
お寺によっては、毎月行事があって、その行事に参加するたびにお布施を納める必要がある場合もあります。そのため、行事に参加したくない、お布施など金銭を負担したくない、という檀家も徐々に増えているそうです。
戒名がなくてもお墓に入れるのか?
戒名に関しては知識も少なく関心の高い問題です。戒名とは(浄土真宗では法名)、「正式に仏門に入った証」として授けられた名前になります。仏門に入ったこと、すなわち、仏様の弟子になったことですから、仏名ともいいます。
受戒として自分の教えを賜る指導者としての師僧から戒を受け、同時に戒名を授かります。カソリックにおけるクリスチャンネームのようなものと考えることもできます。
もともとは、在家信者が戒を授かることで生きているうちに仏縁を結び、仏教徒として精進して暮らすことで使われていました。戒律という言葉を聞いたこともある人もいるでしょう。
しかし一般的には死んだ人につける名前と思っている人が多いのが現状です。いつもは仏教とは縁のない生活をしているので、葬儀もお墓に刻む名前も本名がいいという人もいます。
中には、実際にそのようにして、葬儀も本名のまま、戒名をつけないでお墓に入る人もいます。しかし、菩提寺がある場合、その寺院墓地に入るのなら、菩提寺の住職に戒名をつけてもらわないと納骨できない場合がほとんどです。
菩提寺でなくても新しく寺院墓地でお墓を買って、納骨となるのなら、戒名を授かることがほとんどでなのです。
それは、四十九日法要までは中陰と呼ばれる状態で、この状態の時に仏門に入ることができれば、仏縁によって、六道輪廻に迷うことなく極楽浄土に行き、成仏できると考えられているからです。
在家信者のように生きているうちに受戒して精進することはできなくても、四十九日までに仏門に入ればいいとして、葬儀の時に菩提寺の住職を師僧として戒名を授かるようになりました。ですから、本来は寺への貢献度によって、戒名が異なるのが本来の姿なのですが、今では金銭の対価となったのです。
戒名は、地域によっても宗派によっても違います。西日本のほうが安めの金額とも聞くことがあります。
永代供養や霊園でお墓を買ったが、管理会社が倒産したらどうなるのか
政府の考え方の基本としては、墓地は永続性や非営利性が求められています。
墓地というものは、先祖代々の墓というものがあるように、代々墓を受け継いでいくことが前提のため、ことに永続性が求められます。
利用者の側からすれば破綻の可能性がなく、将来にわたって安定的で適切な経営が行われる業者でないと安心して利用できません。
そのため、墓地の許可は、宗教法人や公益法人に限られていますし、許可の審査は厳しくなっています。
それだけにいったん、許可がおりたら、許可の取り消しが容易でないことからも慎重になっているのです。許可後の経営のチェックも求められます。
墓地には高い公益性があり、墓地を利益追求の場にして、利用者が犠牲となってはならないという基本方針があります。
もし何かあった場合でも、きちんと責任の所在がわかるようにしていないといけないのです。
もちろん、墓地の募集は許可が出てからとなります。許可が出る前に見込みで募集した場合は、無許可墓地となります。
以前にも取り上げた厚生労働省の通知にある「墓地経営・管理の指針」には、このような問題が発生していたことも書かれていました。
厚生労働省のページ
https://www.mhlw.go.jp/topics/0104/tp0413-2.html
実際の墓地経営においては、墓地を経営する公益法人が、法人の目的外の事業であるリゾート事業等に関与して実質的に経営破綻をきたし、公益法人の設立許可取消処分を受けたというケースを始めとして、墓地開発をめぐるトラブルから多額の負債を抱えて破産宣告を受けたケース、資金繰りが悪化して墓地の所有権が造成業者に移ってしまったケース、実質的な名義貸しが疑われるケースなど、不適切な事例が生じている
このような背景には、日本の少子化や核家族化によって、墓に対する需要が読めない、という問題があります。
今までとは墓に対する意識も変わってること。お墓を継ぐ人がへっていること、散骨でいいとか、樹木葬がいいなど人々の意識の変化もあるでしょう。墓自体がいらない、あったとしても納骨堂でいいなど広い土地を必要としない例もあるでしょう。見込みなど経営予想がつかないこともひとつです。
厚生労働省の通達を読むと、「宗教法人や公益法人も非営利性の面では墓地経営の主体としての適格性は認められるが、永続性の面では地方公共団体の方がより適格性が高い」として、宗教法人や公益法人よりも市区町村などの地方自治体が墓地経営、管理を行うのが望ましいと考えていることがわかります。
おそらく霊園で募集時には、「たとえ管理会社が倒産しても経営主体となる(許可は、宗教法人か公益法人に限られる)宗教法人がそのまま残るので、管理会社が変わるだけ」、と説明されるでしょう。
たしかに墓地の許可は現在は審査が厳しくなっていますし、管理会社が倒産して次の会社に移るとして利用者の不便、不都合にならないようにしていますが、管理会社が変わるだけとは言っても同じような管理とならなかったり、管理費用が値上がりするとなることもありえるのです。
市区町村が作った墓地なら永続性など安心でしょうが、新たに墓地を購入するときには、宗教法人や公益法人の経営主体だけでなく、管理・運営会社も調べることが大切でしょう。