洋型のお墓

 

お墓をめぐる悩みは、多種多様ですが、現代の悩みとしては、少子高齢化の波を受けていることでしょう。

 

「お墓を継承する人がいなくなって、無縁墓になってしまうのでないか?」
「お墓があることで、子どもや孫の負担とならないか」
「故郷から長く離れてしまって、ふるさとにある先祖代々の墓をどうするか?」
「お墓を引っ越ししたいが、どのようにするのかわからない」
「子どもがずっと独身でお墓を継ぐことができるのだろうか」
「夫の家の墓には絶対に入りたくないがどうするか」
「せっかく都内にお墓を引っ越ししたが東京郊外なので墓参りに行けない」

 

これらをまとめると、遠いふるさとにある先祖代々の墓をどうするかの問題、お墓の後継ぎの問題、お墓自体がないのでこれからどうするかの問題にまとめることができるでしょう。

 

これらの悩みの解決には、まず「お墓」を知ることからです。

お墓は、単に亡くなった人の遺骨を埋めておく場所だけの問題ではないと感じる人が多いはずです。

お墓参りに行ったら、お墓のまわりを掃除して、花を添えて、お線香をお供えします。単なる墓石として目印にする場所だけの問題ではないことがわかるかと思います。代々、人の死を悼み、お墓を作ることで死者を弔ってきたのです。

お墓は、亡くなった人のためにあるだけでなく、残された人のためにもあるのです。

お墓のことを考えるには、その前提となるお墓に対する基礎知識としてお墓にはどのようなものがあるのか知っておくことも必要です。

 

民間が作った霊園(公園型墓地)、納骨堂などチラシや広告で見かけることが多くなりましたが、昔ながらの寺院墓地もあります。

 

お墓の相場、費用の目安について霊園ほか納骨堂も

線香

現在の日本では、埋葬方法は火葬がほとんどです。しかし、墓地やお墓、供養のやり方については多様化してきています。

昔からある寺院墓地のほか、霊園、納骨堂、散骨、手元供養、樹木葬などです。

 

今までは先祖代々の墓に入るのが普通で、考えもしなかったのが、多様化されたことで、自分はどのような形式のお墓を選んだらいいのか、お墓の選び方、それが「終活」でも考えられるようになりました。まずは基礎知識が必要になっているのです。

 

お墓には、大きくわけて4種類あります。
寺院墓地、民営の霊園、公営の霊園、納骨堂です。

なお、樹木葬については、こちらの記事で書きました。関連する参考記事としてどうぞ

>>樹木葬のメリットとデメリット

 

お墓については、今まで考えてこなかった人がほとんどでしょう。それらの違い、特徴を知ることで、自分が理想となるお墓選びをしてもらいたいです。

なお、お墓というのは、お墓の土地を買うのではなく、墓地を使用する使用権を買うことになります。墓地の管理者と契約し、墓地使用料、永代供養料というような料金を払うことになります。

これにプラスして墓石の費用、工事費がかかります。

「墓地使用料+墓石代と工事費+年間管理料」

 

「墓地使用料+墓石代と工事費」の部分は、おおよその目安で、150万から300万円といわれています。

「年間管理料」のほうは、民間と公営墓地で異なりますが、公営墓地なら年間500円から、民間なら5000円からというのが目安です。お墓の清掃、草むしりなどは、各自が行い、この年間管理料には含まれていません。

 

では、寺院墓地、民営の霊園(公園型墓地)、公営の霊園、納骨堂そのそれぞれのメリット・デメリットを見ていきたいと思います。

 

寺院墓地とは

寺院墓地とは、文字通り、お寺さん(もしくは神社、教会)が管理している民営の墓地になります。日本では寺院がほとんどですが、使用するためには、檀家、氏子、信者でないといけないというのは共通です。先祖代々の墓というのは、寺院墓地にあることがほとんどです。

 

基本的には、寺院墓地にお墓を建てるということは、そのお寺さんの檀家になってお寺の維持管理に協力するということを意味します。宗教、宗派が違う場合は、改宗する必要があります(宗派が違ったら、戒名を付け直しが必要な場合もあり)。

 

最近は、檀家用墓地と民間用墓地(こちらは檀家用に比べて小規模区画)と両方つくっている寺院も増えてきているとのこと。しかし、あくまでも寺院墓地なので、檀家としての協力義務はなくても、法要はその寺院で執り行う必要性があるなどその宗教宗派に理解がないと難しいことが多いです。

 

【メリット】

古くからの儀式にのっとった形で供養ができる

寺院の管理なので安心感があり、管理が行き届いている

供養が手厚く、日頃から僧侶が見守り日常の中で供養が行われる

寺の本堂で法要を行うことができるなど、遺族にとって便利でなおかつ丁寧な供養ができる

お墓の継承者がいなくなったら、永代供養墓にすることもできる

お寺のそばにあることが多いので、比較的行きやすい場所にある

遺骨の一時預かり、永代供養など比較的柔軟な対応が可能な寺院が多い

 

【デメリット】

宗教宗派が決められる

檀家になることで、お盆や春秋のお彼岸にお寺さんの行事に参加する必要やお布施の必要がある

本堂の建て替え修理時にお寺への寄付が必要になる

檀家としてのしがらみがあり、住職との相性もある

護寺会費(お寺の維持管理費用)が必要になる

墓石の大きさやデザインが決まっているなど決まりごとが多い場合もある

お寺によっては、遠方の場所の寺院公園墓地になる場合もあり、お参りが不便な場合もあり

 

公営の墓地とは

都道府県や市区町村などの地方自治体が管理、運営している墓地です。都立霊園が有名です。

申し込みには、その市区町村に住んでいることなど条件があります。使用権は、公募され抽選になる場合もあります。

お墓のタイプとしては、一般的な墓石が並ぶ墓地、樹木葬もできる墓地、芝生墓地、壁型墓地、納骨堂、合同墓などです。

【メリット】

民営に比べて使用料、年間管理料など比較的低価格

地方自治体の管理運営のため安心

宗教、宗派、宗旨の制限がない

石材店の指定がないので自由に選べる

 

【デメリット】

住民に限定など申し込み資格に制限があり誰でも応募できるのではない

希望者が多い場合(募集が少ない)倍率が高く、抽選に当たらず、取得が困難

利用区域も抽選となり自由に選べない(過去に別のお墓だった区画になることも)

墓石や形に制限がある

応募の期間が決められている場合もある

公営墓地の申し込みを石材店に代行してもらうと当選したらその石材店を選ぶしかない場合がほとんど

 

民営の墓地とは

いわゆる公園型墓地、霊園です。公益法人や宗教法人が管理運営している墓地になります。

寺院墓地や公営墓地よりも高額になる場合が多いです。

後でも書きますが、墓地としての開発許可が出るのは、宗教法人か公益法人に限られます。しかし、その開発の多くは、石材店が行っているのです。もちろん、霊園の契約自体は宗教法人か公益法人としますが、墓石については霊園が指定した石材店に限られるようになっています。

いくつかの石材店が指定となっていても、最初に見学申し込みや案内をした石材店に指定が限られる、としている場合もあります。

石材店が決まっていたことに、あとになって気づくということがあるのです。

2000年頃、霊園開発ラッシュが起き、宗教法人や公益法人にしか認められていない墓地の開発で、開発業者が寺院の名義借りをして、地方自治体から許可を得ていた名義貸し問題が発生しました。

さらには、販売業者と管理会社が別となって、売るだけ売ってアフターサービスに問題が生じた業者もありました。

 

【メリット】

購入者がどこに在住か、遺骨の有無などの申し込みの資格制限がない

宗教や宗派を問わない(国籍も問われない場合も)

敷地の広さ、区域、墓石の大きさ、形、材質など選択可能

比較的申し込み資格がゆるく、募集数も多め

ペットと一緒に、樹木葬が選べるなど選択の幅が広い

 

【デメリット】

場所が遠くにあることが多く、交通の便が悪いこと

設備が充実している分、公営墓地に比べると費用が多くかかることがほとんど

石材店が指定されている場合がほとんど

墓地の見学だけのつもりが石材店の指定になっていたなどの問題も

経営主体と、販売業者、さらには管理会社が違っていて維持管理に問題が生じる場合もある

 

納骨堂とは

納骨堂は、遺骨を安置する屋内型の施設です。室内墓苑、屋内墓地と呼ぶ場合もあります。遺骨を土に埋めないのが特徴です。法律的にはお墓と同じ扱いです。

管理運営は、公営、民営、寺院などあります。寺院が経営する納骨堂は、宗教や宗派が限られていたり檀家になる必要があったりすることもあります。最近は、都市部で急激に増え、新聞や街なかで納骨堂の広告をよく見かけるようになったかと思います。

納骨堂には、お墓を建てるまでの一時的に遺骨を預けるタイプ(以前はこちらが多かった)と、お墓のように永代にわたって遺骨を収めるタイプがあります。

 

多くの納骨堂は、収蔵期限が決められ(1年、3年、10年など)、期間満了時には契約更新により引き続き使うようになります。使用料のほか、年間管理料などがあります。

 

ロッカーのように個別の収納庫が縦横に並ぶ「ロッカー型」、上の段に仏壇のように位牌を安置し、下の段に遺骨収納スペースがある「仏壇型」、立体駐車場のように奥に収蔵庫の遺骨があり、カードをかざして参拝ブースに運ばれてくる「自動搬送式(機械搬送式)」、屋内にお墓が建てられ花や線香をお供えしている「お墓型(墓石型)」、ほかには「棚式」、「書架式」などタイプはいろいろです。

 

納骨堂の費用の目安は、令和元年の時点で、ロッカー型が10万から30万円、仏壇型が30万円から100万円、自動搬送式が50万から150万円です。

 

最近、増えたといわれるのが自動搬送式です。スペースが少なくても大容量の遺骨箱を収納でき、1棟の納骨堂で数千区画の提供が可能ともいわれています。

私も遠い親戚に自動搬送式を選んだものがいて、行ったことがあります。自動搬送式は、ビルの中に参拝室や本堂があって、通常は奥の場所に保管されている骨壷の入った厨子(箱)が参拝室のお墓に自動的に運ばれてきて、遺骨を前にお参りができる仕組みになってるのです。

ただし、ロッカー式のような申し込み時期によって場所が違うなどないため、急ぐ必要もないとの理由や遺骨を動かすことに抵抗がある人もいて、ロッカー式が再度見直されているなど、最近はひところのような急増というまではいかなくなっているようです。

 

【メリット】

草むしりなどお墓の管理が不要

墓石を建てるよりは安価になる

交通の便がよいところにある

室内なので天候に左右されない

夕方や夜にも参拝可能としているところもある

宗教宗派を問わない場合が多い

 

【デメリット】

線香などお供え物に制限がある場合も

遺骨が数が多いと費用が高くなる場合もある

土に埋葬すべきという考えの親族に反対されることもある

 

手元供養とは

遺骨の一部や遺灰を小さな容器に入れて自宅に置いて保管しておくことをいいます。自宅供養ともいいます。大切な人が亡くなって、離れたくない思いがある、いつもそばにいてほしいなどの気持ちからです。

お墓を持たない、という選択をする人も増えているのです。

手元供養には、お墓が買えなくて遺骨のすべてを骨壷に入れて保管したままという場合もあります。

そのような場合以外にも、

「お骨仏(こつぼとけ)」という遺骨を集めて仏像にする方法、小さな専用の瓶や壺に入れておく、小さなオブジェに入れておくなど骨壷に見えないようなものもあります。

遺灰を収めるスペースがあるデザインのアクセサリー(ペンダントやリング)や遺骨の成分で合成ダイヤモンドをつくりアクセサリーそのものに加工するなどもあります。

手元供養は、あくまでも「保管」なので、「埋葬」ではありません。

遺骨の一部を手元に置くためだけには「分骨証明書」は必要ではありませんが、将来、分骨している手元の遺骨を別に納骨する場合には必要になります。

「分骨証明書」は、火葬場で分骨するなら火葬場に、お墓で分骨するなら墓地管理者に発行してもらいます。

 

ただし、手元供養は、その骨壷や遺骨の保管をどのように次世代に伝えていくかの問題があります。自分の夫や妻の遺骨を持つくらいはいいのでしょうが、それを子どもや孫に伝えていけるのか。子の世代も結婚したら、配偶者の家とのつながりもあるでしょう(遺骨を嫁ぎ先に持っていけるのかどうかなど)

子どもや孫の代が遺骨を「捨てる」ことはできないでしょうし、遺骨を家の庭に埋葬することもできません(あくまでも保管だから許されている)。いつか、誰かが処理しなければならない問題になる、ということを意識しておく必要があるのです。

 

手元供養だけでなく、お墓の問題も、子どもから孫など次世代以降へつながる問題であることを気に留めておく必要があります。

 

散骨について

散骨とは、遺骨を一般のお墓に埋葬したり、納骨堂に収めたり、霊園の樹木葬にしたりするのでなく、海や山に撒くことです。一般には海のイメージがありますが、山や空、宇宙に散骨する例もあるようです。

散骨に関しては日本国内では法律が未整備の状態ですので、信頼できる業者の元で行う必要があります。節度が求められます。実績のある業者、散骨の方法、料金など信頼できる業者であるかの見極めが重要です。

 

散骨自体を禁止する条例や散骨場を経営を禁止する条例がある地方自治体もありますし、厳しいガイドラインを制定する地方自治体もあります。

散骨はいわば法律の隙間にあるのです。1990年頃までは散骨は「死体遺棄罪」にあたり違法と考えられていました。しかし墓埋法の4条では、火葬後の遺骨を墓地等に埋葬する規定だけであって、散骨については規制されていないと解釈されていました。

 

1990年に法務省刑事局から刑法190条について出された非公式の見解により、散骨は「節度をもって行う限りは違法ではない」という解釈になったのです。

刑法190条について非公式に述べただけなのですが、「刑法190条の規定は社会的習俗としての宗教感情を保護する目的」だから、「葬送のための祭祀で節度をもって行われるかぎり問題ない」としているだけで散骨はグレーの状態なのです。都道府県や市区町村の条例で禁止されている場合もあるのです。

 

刑法190条(死体遺棄罪、死体損壊罪等)「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する」

墓埋法4条 「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
2 火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない」

 

散骨は、主に海洋散骨(海洋葬)が多いようです。遺骨を砕いてパウダー状(2ミリ以下)にして遊覧船や客船、釣り船で散骨するという方法です。

親族で船を貸し切りにする個別散骨、複数の家族で船に乗っておこなう合同散骨、散骨業者にすべてまかせて委託する、委託散骨(代行業者)があります。

特に、すべてまかせる代行業者に頼むと、一度も顔を会わせないまま終わることもあるので、確認は重要です。

 

散骨の費用の目安は、令和元年の時点で、個別散骨が20万から30万円、合同散骨が10万円から20万円、委託散骨が3万から5万円という目安です。遺骨をパウダー状にする費用は別途かかる場合が多いようです。

 

散骨は、散骨する場所、漁業への影響がないようにしなければならないなど注意する必要があります。「節度をもって」なので、漁業場、海水浴場、養殖場、海上交通の要所を避けるなどして場所を選ぶそうです。

本来、海には漁業など目的があるので勝手に散骨するのは許されないのですが、法律が未整備のため、罰することができない程度の曖昧な状態にあることを頭においておきましょう。

 

それと、遺骨の一部だけならいいのですが、全部を散骨してしまうと、あとになってから、お墓を建てたいと思っても埋葬する遺骨がないということになります。

 
一口に「散骨」と言っても、すべての遺骨を海などに撒いて散骨するのか、一部は残してお墓に入れておくのか、また、一部は残して、手元供養にしてほしいのか方法がありますから遺族との話し合いも必要です。

散骨自体は、生前に予約できる業者もあります。一部を残さないとなると、お墓の必要がなくなりますが、残された遺族はそれでもいいのかという問題もあります。
散骨をしてほしいと遺言書に書くこともできるでしょうが、それを確実に行ってくれるかどうかは遺族によるでしょう。

 
なお、日本には、「墓地、埋葬等に関する法律」、墓埋法があるので、自分の家の庭などに勝手にお墓や墓地をつくることはできません。

遺骨を埋葬することは勝手にできず、地目が「墓地」となっている場所以外に埋葬できないことになっています(参考:墓埋法4条)。

 

樹木葬は最近、人気ですが、樹木葬も「墓地」として決められた区域(主に霊園の中)で行われているのです。