和型の墓石

 

今回は、墓の種類についてです。

庭園のような場所に、洋型の墓石というのも人気です。墓石のデザインだけでなく、石の色、材質など見た目も考えたうえで購入していることもわかります。美しく耐久性のある墓石を選びたいものです。

選び方のひとつに、実際に墓石が建てられてから年月が経ったものを参考にして見てから選ぶといいといわれています。

また、墓石の種類だけでなく、墓に誰と入るかによる種類もあります。

家墓と呼ばれる先祖代々の墓、一族が代々入っている墓もあれば、ひとりで入る個人墓、血縁関係もない人と一緒に入る合同墓、共同墓などでの分け方です。

和型墓石、洋型墓石、デザイン墓も

 

墓石の形についての分類によると、以前からある先祖代々の墓は、「和型墓石」と呼ばれています。1990年代かから人気が出ているのは、背が低く横長の「洋型墓石」です。

お墓のタイプは、霊園で決められた規約の範囲内で選びますが、お墓の場所、区画の大きさも重要です。

洋型はデザインの自由度が高くて、背が低いので開放的に見えること、使用する石材が少なくてすむので人気が出てきました。最近は、新規のお墓となると、ほぼ半分が洋型になっているといわれています。

オリジナルデザインの墓石にしたり墓石に凝る人もいれば、墓石に刻む文字に凝る人もいます。

全国優良石材店の会(全優石)が実施した、「2018年お墓購入者アンケート調査」によると、
http://www.zenyuseki.or.jp/pr/?p=123

和型の縮小傾向に歯止めがかからず35.2%(前回37.6%)、洋型は43.7%(同44.1%)で5年ぶりに前年比を下回ったのに対し、デザイン墓は16.2%(同13.4%)

以前は、半数以上が和型だったのに対し、洋型のほうが多い結果です。じわじわ増えているのがデザイン墓ですね。

2009年からの推移は、

和型は51.0%から15.8%減と低落傾向が続き、洋型は30.4%から13.3%増ですが今期は足踏み、デザイン墓はこれまで12~13%で推移するなか、今期は一気に16%台まで上昇しました。

アンケート調査でも、和型の人気の無さがわかります。洋型かデザイン墓に流れが来ているようです。

平均購入価格は、全体平均162.7万円に対し、和型165.2万円、洋型160.5万円、デザイン166.5万円。

和型、洋型、デザインでみると、洋型が少し安めになっています。

ちなみに、地域別をみていくと、

最も高いのは3年連続九州で190.2万円、次いで1都3県182.7万円、関東176.8万円の順。逆に低いのは東北138.8万円、北海道141.1万円となりました。
1都3県とは、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県

九州が高く、東北地方に比べると50万円ほど高いことになります。

なお、お墓、墓石のデザインについてですが、特に寺院に顕著ですが霊園によっても墓石の形に決まりがある場合もあるので、事前に確認が必要です。

家墓(いえはか)とは

洋型墓石

「先祖代々の墓」と呼ばれるものが「家墓」です。
「○○家先祖代々の墓」と書いてあるものや、たんに「○○家の墓」とだけ書かれている場合もあります。

 

地方では何代も続く先祖代々の墓のほかにも個人墓があってそれらをすべて管理している、という人もいます。

もう故郷に帰ることはないからと、「先祖代々の墓」を墓じまいして、永代供養の「合同墓」に移ったという人もいます。

 

個人墓、両家墓、合同墓

「個人墓」は、一人の人を埋葬するお墓です。
「夫婦墓」は文字通り、夫婦2人のお墓です。

 

江戸時代は個人墓や、夫婦墓が主流でした。泉岳寺にある赤穂浪士の墓(赤穂義士墓地)は、四十七士のほかに討入り以前に自害した萱野三平の供養墓を含め48基の墓塔があります。その中には、埋葬されていない供養塔もあるのですが、個人個人でお墓となっています。

あの場に行きますと、今も絶えることなく人はお参りに来ていることがわかります。

 

日本人のお墓は、天皇や豪族などは古代から作られ、中には古墳として存在しているものもあります。一般庶民のお墓が一般的になったのは、江戸時代以降の檀家制度ができてからといわれています。
檀家制度は宗教統制の必要から、すべての家は、特定の寺に所属する方法が取られたのです。

 

檀家制度によって、檀那寺にお墓を作り、墓は家長が継ぐことになりました。檀家制度があることで、戸籍の役割もあり、最近何世代にも前に遡って家系図を作る商売がありますが、戸籍でたどることができないとお寺に行ったり、お墓を調べたりすることでわかることもあるのです。

 

ちなみに、檀那とは、「お布施」の意味だそうで、お布施でなりたっているお寺ということができます。

 

このように明治より前は個人墓が主流でした。最近では、夫の家の墓に入りたいとして、個人墓を希望する人もいます。

永代供養墓のところでも書きましたが、生涯独身で個人墓に入りたいという人の場合、承継者がいないわけですから、永代供養の契約をする必要があります。

最初から永代供養墓に入るとして個人墓、夫婦墓を建てる人もいます。

 

「家墓」が主流になってきたのは、明治以降です。家制度が重んじられてきてからのことです。

 

中には、一人っ子で、夫と妻のそれぞれの親のお墓があって、2つのお墓を管理するのが難しくなってきたという理由から「両家墓」を作る人もいます。

自分の親のみならず、夫、もしくは妻の親と一緒にして、両方の親を祀ります。

 

一方、まったく血縁関係がない人と一緒に遺骨を納める形のお墓が「合同墓」です。「共同墓」「合葬墓」「合祀墓」という場合もあります。

合同墓は、骨壷のまま納めて、一定の期間契約で定められた期間祀られた後に、他の遺骨と一緒に合葬される場合と、最初から骨壷から遺骨を取り出して、他の遺骨と合葬する方法があります。

 

なお、地域によっては、墓埋法の施行以前に、すでに存在し、村落の一部の共同体で限られた人だけが利用できる古い共同墓地があります。これを「みなし墓地」(法律前から存在していた墓地を許可を受けていたとみなしているため)といいます。

この共同墓地のことを、共同墓と呼ぶ人もいますが、この古くから地域の人だけで管理していた「みなし墓地」とは、上で説明した「合同墓」とは別のものです。

 

家族や血縁関係のある人と一緒にお墓に入りたい

第一生命経済研究所が2010年に行ったアンケートがあります。

35 歳から 79 歳までの全国の男女 600 名に聞いた
『お墓のゆくえ-継承問題と新しいお墓のあり方-』
~合葬式のお墓に入ってもよいと考えている人は約3割、一方、散骨への抵抗感は強い

http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/news/news1007.pdf

誰と一緒にお墓に入りたいかの問いに

「先祖代々のお墓」(39.0%)がトップ。第2位は「今の家族で一緒に入るお墓」(25.0%)。

となっていました。

調査では、

「先祖代々のお墓」を希望する人は、男性では 48.6%いたのに対し、女性では29.9%と、20 ポイント近い差がありました。

合同墓、共同墓についても聞いていました
血縁や婚姻関係を超えた人たちで一緒に入る共同のお墓(合葬式のお墓)についての考えをたずねたところ、

「お墓としては好ましくない」と回答した人はわずか 5.8%で、「自分は利用したくないが、承継者の問題などから普及するのはやむをえない」と考えている人が 49.3%と半数近くに

承継者の問題が頭にあって、仕方がないと考えている人が多いことがうかがえます。
また、合同墓についての意向をたずねると。

「生前に知っている友人や家族などと一緒であれば、自分は利用してもよい」「知らない人と一緒でも、自分は利用してもよい」と考える人を合わせると、29.2%の人は合葬墓に入ってもよいと考えています。

3割近くが合同墓でもよいという考えです。

無縁墓について、無縁化防止対策としては、

「期限付きのお墓にして、継承する人がいなければ期限後に合葬する」方法を挙げた人が 35.3%と最も多くなりましたが、「寺や教会などが子孫に代わって管理する」方法を挙げる人(33.4%)とほぼ二分

永代供養墓を意識しているようで、養子をとってでも子孫が墓の継承者となる方法を考えることや、散骨をして墓自体を作らないという考えよりは多かったです。

期限が来たら合葬も仕方がないと思いつつも、できればお寺という長く続く宗教法人で、子孫の代わりに供養や管理を続けていってほしいのが本音なのかもしれません。

 

祭祀承継者とは、誰がなる?

墓悩み

お墓、墓碑、墓所、仏壇、位牌、さらには家系図や神棚まで先祖を祀る祭祀に必要なものを祭祀財産といい、それを継ぐ人のことを「祭祀承継者」といいます。通常の相続財産とは切り離され、共同相続の対象にはなりません。相続税の対象から外れます。

 

祭祀財産は、祭祀を行う祭祀主宰者が単独で受け継ぐことになっています。祭祀承継者については、法律で決められているわけではなく、配偶者がなっても、長男、長女がなってもいいですし、他の親族がなることもあります。

 

民法897条には、祭祀に関する権利の承継として、このように定められています。

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

 

この条文があることからも、日本人にとっては、先祖の供養や祭祀に関して重視してきたかがわかります。

ただ、現在の民法では、祭祀財産を引き継いだ人が祭祀を行う義務があるとは書かれていません。
旧民法では祭祀財産を含め財産は家督を継ぐ人が引き継ぎ、祭祀を行うことが義務でした。

 

そのため、祭祀財産を引き継いだことでかえって、金銭的負担がかかることもあります。檀家となってする仕事も増えることでしょう。寺院墓地では、檀家にならないといけないことがありますから、祭祀承継者の宗教や宗派が違うとなると問題になります。

 

そこで、最近は遺言書にお墓を引き継ぐ人を指定しておき、その人に少し余分に遺産を相続させることなども書いておくことがあるようです。生前贈与で、先に渡しておくこともあるでしょう。

 

被相続人が祭祀主宰者を指定したときは、その人が祭祀主宰者になります。指定がないときは、慣習によって祭祀主宰者を決めます。決まった人がいない場合は、親族の話し合いになりますが、それでも決まらない場合は、家庭裁判所の調停や審判になります。

 

さらに祭祀主宰者は、祭祀承継者を死んだ後ではなく、あらかじめ指定しておくこともできます。この指定は、遺言書に限られず、口頭でも可能です。生きているうちに、「長男に墓を継がせる」ということも可能です。

 

祭祀承継者は、法的な手続きは必要ないのですが、墓地の使用者となるので、墓地の管理人に名義人の変更届が必要になります。霊園などによっては、名義変更の期限があって、使用権を失うこともあるので、忘れずに名義変更の手続きをしておきます。